明太子 つぶつぶ日記

福岡出身の男が、東京に家を買って日々生活で思ったことを綴ります。

恋と嘘をみて連想したもの

恋と嘘、というアニメを見たエントリーでも書いたが、この設定、世界観はやはり面白い。もっと硬派に展開しても充分ドラマになりうるし、面白い設定だと思う。

 

そしてこの作品をみているときに、私の頭の中ではある別の作品が連想された。というか、小中学生くらいの時に読んだ小説がふっと思い起こされた。

電話がなっている、という題名の小説、ショートショートで、恋と嘘とは違って明るい話ではない。

ネットで検索すると、川島誠セカンドショットという短編集のうちの一つ。たしかにこのころ川島誠を何冊か読んでいた気がする。この時期を外すと1冊も川島誠とは触れなかった気もするが。

 

 

セカンド・ショット (角川文庫)

セカンド・ショット (角川文庫)

 

 

で、この話。簡単にかくと、15歳くらいで法律で試験、テストを全員受けさせられる。その日テストの結果でAランク、Bランクなど細かくランク付けされて、その結果で将来が決まる。

主人公の男の子は中の下くらいだったかな、のランクになってとりあえず喜ぶべき結果。

でも、男の子が想いを寄せていた女の子は成績優秀な子だったが、教師に処女を贈呈した挙句後悔しており、さらに不幸なことに事故にあって脚に障害が残って、試験すら受けられない。一番下のランクが決定している。

彼女からの電話がなっている。お祝いの電話だろうが、電話に出られない。

一番下のランクになった彼女は、明日には暗い食肉加工場に吊るされているかもしれない。

 

と、うろ覚えだがこんな感じ。

子供ながらに衝撃を受けた。教師と関係をもっちゃうことにすら抵抗というか、そういう展開になれていない時分に、さらなるこのトラウマになりそうな展開。まさに、悪意。

 

話を戻そう。

恋と嘘は最適な、幸せを約束する結婚相手をシステムだった。一方で電話がなっている、はそのシステムによってはじかれる設定を描写している。恋と嘘も素晴らしい制度としてこのシステムを描く場面が多いが、もっと着眼すべきは主人公のネジではなく、高崎様である。

ネジは高崎様と結ばれないジレンマはあるかもしれないが、サナダムシという幸せが約束された相手がいて、しかもその相手にもちゃんと惹かれている。つまり、どっちを選ぶか悩んでいる。

でも、高崎様は違う。ずっと想いを隠し、持ち続けていた相手がシステムによってぱっと出の女に奪われてしまう上、社会的にはその相手に譲らざるをえない状況。しかも、本人は先に誕生日を迎えてるにもかかわらず、まだ政府通知がきていない、相手がいない。

ネジのハーレムよりも、切ない高崎様や、高崎様にネジを譲り辛い嘘を付き続けることを覚悟した真田虫などにもっとクローズアップしてほしかった。

システムによってもっと不幸な目にあっているのは高崎様であり、真田虫であり、電話をかけている女のコだ。

システムで一定の幸福を享受するものの目線ではなく、その中で耐え忍ぶ人物の心情をより描写すれば、システムのアンチテーゼというか、強い社会性のあるメッセージを込められるであろう。

 

ま、恋と嘘はそういう強いメッセージ性のある作品ではないし、そういう報われなさすぎるポジション視点にすると救いがなさすぎて暗くなりすぎる、欝すぎるのもわかるし、商業的にはネジなり、電話に出れない男の子の視点からにした方が間接的になっていいのかもしれないが。